すっぴん
右目が少しだけ乱視である。
ある日、ふと寄ったハードオフでサングラスを買った。
ほぼ新品のRay-Banのサングラスだった。
ケースもピカピカだった。
初めてのサングラス。
普段帽子も被らないので、
顔になにか付けて歩くのが小っ恥ずかしかった。
眩しくない。
全く眩しくない。革命だ。
毎日のようにサングラスを掛けて出かけた。
今まで日中眩しくて目を細めて歩いていた生活に戻れないくらい目を開けて生活できる。
なにもかもがはっきりと見える。
眩くないだけではなかった。
あることに気がついた。
少し、こころが落ち着いていた。
道行く人 電車で向かいに座っている人 ティッシュを配っているお姉さん
あらゆる人と物理的な壁を1枚(いや2枚か)挟んで生活できる。
一歩離れた感覚でいられる。
眼鏡でも同じ効果を得られるのだろうか。
透明でも同じ効果は得られるのだろうか。
恐る恐る眼鏡屋に入る。
折角人と壁を作るために買うのだ。友人などに眼鏡を買った理由を聞かれた時に面倒くさいので、右目のレンズにだけ乱視の補正を入れた。
レンズはブルーライトカットなので、完全に透明ではなく、
うっすら黄色掛かっている。
サングラスに比べると効果は落ちるが、
食事やお店でもずっと掛けていられる眼鏡はすごく良い。
常に壁を挟んで人と接することができる。
最強アイテムを手に入れた気になった。
もはや顔になにも付けないで人と接するのが恥ずかしい。
壁を設けることで、人との距離を縮められたかもしれない。